69執事「終わりなき闇」 9
骸が部屋を出て扉を閉め終わるのを見送ってからツナが厳しい表情を隼人に向けた。
「獄寺君実はね」
そんな表情を見なくてツナがなぜここにやってきたのか薄々気づいていた隼人は微笑んだ。
「10代目俺に用があるんですね」
ツナはこくりと頷いた。
しかしツナは窓の外を眺めて
「薔薇がきれいだね」
等と関係のないことを言っている。
雲雀がいたらしびれを切らして先回りして用件を切り出すだろう。
獄寺は根気よくツナの言葉を待っていた。
「その薔薇は母の形見みたいなものなんです」
「ふーん獄寺君のお母さんは何時亡くなったの?」
大々的な事件であったが国が違うのでイタリアまではその詳細は届いていなかったらしい。
普通に隼人の母親が亡くなったのだと思っているようだ。
「3年前です。その頃に骸と出会ったんです」
ツナが振り向いた。
「そっか、実はね」
ツナはもう一度隼人の顔を見て用件を言い出そうと試みる。
「指輪っすね」
隼人はツナが言う前にそうじゃないかと思う言葉を口にしてみた。
ツナが曖昧に微笑んだ。
「僕はね別に君のご両親の形見を奪いに来た訳じゃないんだ」
「もちろんっす」
隼人が微笑んだ。
「けど10代目の頼みでもこれは渡すわけにはいかないんです」
隼人は自らの指にはめられている嵐のリングを撫でている。
「そう・・・だよね。はは、いいんだ別に。気にしないで」
ツナが微笑んで隼人の指を見る。
日の光にキラキラと輝くシルバーのリング。
ツナがはめているクリスタルの大空リングと併せると
奇跡を呼ぶと言われていた。
「俺もさぁ、迷信なんて信じちゃいないんだよ」
「いや、10代目不思議なことは世の中には五万とありますよ。甘く見ちゃダメっす」
いきなり隼人が力説する。
そういえば獄寺君は世界の不思議が大好きだったんだとツナは苦笑いを浮かべた。
それから話題が雲雀のことになると
ツナはなにやらソワソワしていた。
「ごめん・・・俺何かうまく言葉じゃ表現できなくて」
「そんなにおつらいのですか?」
隼人が優しく声をかける。
隼人はツナに対してはボンゴレ10代目ということでかなり慕っていた。
そのために他の誰にも見せない優しさを彼にだけはストレートに表現するのだった。
「違う・・そうじゃないんだ。彼ね、えっと・・雲雀さんが俺の執事になったのはね」
涙ぐんだ自分が今更恥ずかしく思えたのかツナはわたわたと説明を始めた。
隼人は黙ってそれを見守っている。
「俺がお願いしたからなんだ。本当は彼はこんなところで仕事はしない人なんだけどね」
そこで一回言葉を切るとデミカップを持ってエスプレッソを口に運ぶ。
「どうしてあいつなんですか?」
隼人のその言葉にツナが顔を上げると隼人はフッと微笑んだ。
「どうしてだろう・・・俺もよくわからない・・・けど安心するんだ。ってあれ?違う、いつもハラハラしてる。今日だって獄寺君のことあんな風に誘っていたし」
「それは違います10代目!」
隼人がテーブルに手をついて前に乗り出すとツナは首を横に振った。
「いいよ、気にしないで。獄寺君は俺から見ても何か色っぽいし、獄寺君ならいいよ」
「いや、俺は良くないっす!」
「冗談だよ。嫌だなぁ獄寺君」
と笑ったツナに、隼人は本気にして慌てた自分が恥ずかしくなり赤くなった。
「獄寺君」
ツナの声に顔を上げると目の前のツナはバラの咲く庭を眺めながら
微笑んでいる。
「俺思うんだ。こうしていつまでも冗談とか言いながらお茶とか飲んでいられるのってすごく幸せなことなんじゃないかって・・・本当に手入れが行き届いたきれいな庭だね」
「10代目・・・お気に召したのなら一週間とは言わずにいつまででもいてもらっていいんですよ」
するとツナはゆっくりと首を左右に振った。
「嬉しいけどそういう訳にもいかないんだ。実はねイタリアは今大変なことになっているんだ」
「えっ?!」
「マフィアとか犯罪者とか悪人がはびこって、これまでうちのファミリーで均整を保ってきたんだけどそれがきかなくなっちゃって・・・」
「それで俺の嵐のリングと10代目の大空のリングで沈めようとしたんですか」
ツナはこくんと頷いた。
隼人はそれを聞いて自らの薬指にはまっているリングを眺める。
しかし、これは両親の形見であり骸との契約の証でもある。
これを渡してしまえば隼人はまたひとりぼっちになってしまう。
「大丈夫。だからね雲雀さんはどうしても必要なんだ。彼が俺のファミリーでは最強だからね」
遠くを見据えて話すツナを見つめながら隼人は、自分と同じ歳で重いものを背負っているツナがとても逞しい反面、どこか切なく見えた。
そっと立ち上がるとツナの横のイスに移動する。
「10代目・・・」
両手を取るとツナの瞳がまた僅かに潤んでくる。
「ハハッ」
それを悟られまいとツナは無理に笑った。
お互いに手を取って見つめ合っている。
そこに夕食の支度を終えて呼びに来た骸が姿を現した。
「コホンッ、あのお取り込み中失礼します。そろそろ冷えて参りましたのでお部屋にお入りください」
隼人とツナの2人は顔を見合わせて笑った。
まるで幼い子供がいたずらをしたように無邪気な笑顔を骸に見せた。
「全くあなた様というお方は・・・」
<つづく>![]()
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読了、お疲れ様でした。
web拍手をありがとうございます。
すごく感謝しています。
オフにはもっとストーリーしっかりしたかったのに
結局バタバタです。とりあえず頑張ります。
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